| ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」 販売元 : Amazon.co.jp 本 価格 : ¥ | |
君は運命を信じているかい? 自分達の意志とは関係なく回っていく世界の流れを実感したことはあるかい?本書カバー裏より
これは六人の少年少女たちの物語だ。彼らは未来を視ることができる不思議な力を持っていて、彼らの間でだけその能力をささやかに使っていた。彼らに罪はない。そして責任もない。しかし──
「これ──ブギーポップ?」
六人の予知にこの僕の幻影が現れた時、運命の車輪は回り出した……。
第四回ゲーム小説大賞で〈大賞〉を受賞した上遠野浩平のブギーポップ・シリーズ第三弾。六人の選択は救いか。それとも破滅か……?
ニコニコ動画でMADを観てから
ブギーポップを再読したくなりました。
シリーズとしての順番は関係なく
好きな作品を無作為に読むのもまた素敵ですよね。
そんなこんなで「パンドラ」の紹介です。
まずはキャラクターに関してね。
ネタバレ注意です。
■数宮三都雄 Bany Talk
「ああ──なるほど、そういうことか。それで、おれって──」
お人好しでどこか抜けている。
そんな三都雄の飾らない優しさのおかげで
随分と雰囲気が和らいでいたように思います。
その不完全な能力が無ければ
どこまでも普通の少年だった三都雄。
三都雄は「何か」を選んだのでしょうか?
それとも「何か」に選ばれたのでしょうか?
そういった質問に三都雄は答えず
ただ穏やかに笑っているだけのような気がします。
きっと──。
そうすることが三都雄にはとても自然なことだったのでしょう。
■七音恭子 Aroma
「河の、腐った水の匂いがする。場所はだいたいわかるわ」
それはきっと微かな予感。
現実から逃げてきたあたしにとって
みんなとの他愛もないお喋りは
ちょっとした刺激のつもりだった。
だから別に大きな事件に関わるとか
世界を救うなんて大それたこと
これっぽっちも考えちゃいなかったのだ。
ただみんなと一緒にいることで
少しでも不安が紛れればいいって思っていた。
だけどこんなことになるなんて……。
■天色優 Stigma
「みんなで助けあってればどんなことでも乗り越えられるよ、きっと」
誰もが嘘をつき。
きっと誰もが傷ついた──。
優しさのなかで苦しんでいた優。
それが叶わぬ夢と知りつつ
いつまでもこんな時間が続けばいいと思っていた。
その願いはそれほど大それたものだったのでしょうか?
もし最初から物語の結末が決まっていて
そのためにみんなが集められたのだとしたら…。
仲間を失い願いも届かず
閉ざされた暗闇の中でひとり少年は眠り続ける。
その腕に薄汚れたスケッチブックを抱え
優しい想い出に包まれながら…。
■神元功志 Whispering
「こういうこともあろうかと、僕が前から借りておいたんだよ」
自分の暗い過去には触れられたくないから──。
お互いがお互いのことを深く詮索しない。
緩やかな連帯感と居心地の良い時間。
それは現実から目を背けているだけかも知れない。
でも、それでも確かに彼らは
掛け替えのない「今」を生きていた。
功志の願いは時を超え
遙かな過去をも飛び越えて
ひとつの小さな奇跡を呼び起こす。
それが彼女の気持ちに答えられなかった
功志なりの優しさだと思います。
■辻希美 Automatic
「あーあ、まぁた功志に嫌われちゃった」
それは恋と呼ぶには淡すぎ
愛と呼ぶには幼すぎた。
いつも前を見ている功志が好きだから
この関係を壊したくはなかった。
ううん。
本当はきっと判っていた。
功志にはまだ私を受け止める余裕はないんだって。
私だけを見てなんて言わないから
せめて一緒に同じことを感じていたかったのに
馬鹿だよね…私。
■海影香純 Into Eyes
「俺の眼に、おまえが映ってるかな?」
そうだ。
俺たちは実のところ
未来なんかほんとはどうでもよかったんだろう。
予知するために、とか
能力を思いっきり使うため、とか
そんなのは全部付け足しみたいなものだった。
俺たちは結局、互いのことをすごく気に入っていたという──
他のヤツのことが自分よりも大切なような気がしていたという
それで俺たちはいつもいつも六人でつるんでいたんだ。
だから優の正体を知ったときも
そして俺は勘づいていたが辻には何の能力もないことも
俺たちにはまったくどうでもよかった──
そんなことは関係なかったんだ。
能力とか才能とか、そんなものは、まるっきり。
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最初から最後まで計算され尽くした
一本の映画のような作品でした。
登場人物それぞれが抱える口に出せない事情や
心に抱える想いなどが絡み合って
荒れ狂う災厄の中にあって
たったひとつの希望を紡ぎ出している。
私はそんな印象を受けました。
もう絶対にあの頃には戻れない。
残酷なまでに冷徹な現実。
彼らが出逢ったのは決して偶然なんかじゃない。
それは勿論、世界を救うためだったり
あらかじめ仕組まれていた運命なんかのせいじゃなくて
お互いがお互いを必要としていたから。
不幸になるために選ばれたのではなく
かけがえのない時間を一緒に過ごすために
彼らは自らの運命を選び取った。
そう──私は思います。
還らざる時の終わりに
いつか彼らが再会できることを祈りつつ。
みんな幸せになれると良いですね。


